「饗宴」 プラトン著 久保勉訳 岩波文庫
またまたプラトンです。前の「パイドン」のエントリーでも書きましたが、この人の文章の上手さ、構成の巧みさは、素晴しいです。哲学者にしておくのはもったいない(笑)。とにかくソクラテスをはじめ登場人物もみんあ魅力的に描けているし、「シンポシオン」ー共に飲むという宴会の雰囲気の中で語られる「エロス賛歌」はギリシア的な雰囲気に満ちています。史実に基づいているとはいうものの、プラトンの創作にかかる部分も多いでしょうから、やはりこの人の作家としての力量は並大抵ではありません。
特に私が感心したのは、ソクラテスの演説の中に、マンティネイヤの婦人ディオティマから聞いたという箇所が挿しはさまれているところです。いわば「入れ子」の構造になっていて演説の主旨をより効果的に表す事に成功しています。他の対話編と同様に、論理はわかりやすい平易な例から段々と抽象的霊的な領域に近づいていきます。現代の我々の考え方の基礎となっている論なので特に新奇さは感じませんが、無理のない論理の展開です。
「饗宴」は、「ソクラテスの弁明」や「パイドン」に比べると全体にハレの雰囲気を持っています。悲劇作者アガトンの作品が賞を得た祝いの宴会が舞台なので、当然かも知れませんが、人々の心を躍らせる「エロス」への賛歌がテーマになっていることも大きなファクターでしょう。「パイドン」とはうってかわったソクラテスの陽気な一面を見ることができます。プラトンが師との楽しい思い出を回想しながら、執筆した姿が浮かんできます。
「弁明」「パイドン」に比べると訳がちょっと古いのが、残念かも。
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