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2022年5月20日 (金)

「大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇」 堀栄三 文春文庫

戦略の失敗を戦術で取り戻す事は不可能だ

内容は旧日本陸軍大本営の情報参謀であった著者が、その体験を通じて米軍と比較して、旧日本軍の情報に関する認識の低さが招いた悲劇をまとめたものです。一参謀の視点から記述したものですので、当時の大本営参謀についての包括的な記述ではありませんし、情報についての教科書という事でもありません。著者が陸軍大学校を卒業後、大本営の新米情報参謀として勤務を始めるところから、フィリピン方面軍の参謀を経て、大本営に戻り、終戦後自衛隊への入隊、ドイツ武官時代へと時系列で記述されていて、戦時の緊張感もあり、面白く読みすすめる事ができました。文章も平易で読みやすいです。
冒頭の一文は、この本に中で繰り返し述べられている内容です。自身の会社を振り返ってみても現場を預かる立場としては、痛感する事が多いです。日本人の意思決定にあたっての情報に関する感度の低さは、この情報の溢れる社会においても、当時から変わっていないように感じます。そこで現場が苦労するわけです。会社なら現場が疲弊するという結果ですが、(実際これだって心を病んだり離職という重大な結果を招きかねませんが)戦場では尊い命が失われます。

現在のロシアのウクライナ侵攻をみていても、今やメディア、SNSを巻きこんだ情報戦です。ここでもアメリカはロシアよりもうまく情報を使っているように感じます。もちろん戦争など起こる前に解決する事が一番肝心ですが、それだって情報を如何に収集して判断できるかにかかっているでしょう。日本政府は当時よりは少しはましになっているのでしょうか?意思決定のスピードや合理性をみていると、どうも全く進歩しているように見えないのですが。色々な事を考えさせられた本でした。

余談ですが、有名なマレーの虎山下奉文将軍の記述が出てきます。私もパブリックに言われているイメージしか持っていなかったのですが、人間味のあふれる人物描写に、現場の責任者として学ぶ点が多々ありました。

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